昭和30(1955)年。国鉄が黄金期を迎えようとした年、ある放送局の若きディレクターが、「プライベート」で東京駅頭の案内放送を録音していました。“ライナーノート”には、「収録日30年2月11日」と書かれています。本人は鉄道ファンではなかったため、牽引機のナンバーや編成等の記載が無いのは、仕方がありません。 幅1/4インチ、直径7インチの「オープンリール」に「業務用機材」で記録された貴重な「音源」には、特急が「特別な急行」だった客車時代の“つばめ”の発車(マイテが連結されていました)や、遠く九州へと西下する普通急行“阿蘇”、C62牽引の常磐線からの新橋行き普通(通勤)列車等が入線する模様までも、記録されています。 テープには、前年の昭和29年9月に進駐軍専用列車「デキシー・リミテッド」から改名されて間が無い、急行“西海”の放送も記録されており、「急行列車、佐世保行き」と案内したあとに列車名を入れて言い直しています。 昭和27(1952)年3月31日にRTOが廃止された後も、流暢な英語で構内放送が流されていたことも大変、興味深いと思います。 流行語にもなった“もはや戦後ではない”という言葉を、中野好夫が「文藝春秋」に発表する一年以上前の録音です。 往年の名列車が、東京駅を旅立つ瞬間を記録した「音源」。ホームの雑踏を聞きながら、半世紀以上前の東京駅から、旅立ってみませんか? さて、貴方は「TR71」のジョイント音が、聞き分けられるでしょうか――(26分43秒)。 【音声の無断引用あるいは使用、改竄等は絶対にお止め下さいますよう】 |