工場に入場してから約五ヶ月が経過し、各専門職場で修繕および部品の交換は着々と進められた。「58654」は“竣工当時”と見間違えるまでの完全な姿を私たちの前に現してくた。「人吉市SL展示館」での事前調査で唯一、懸念材料として残されていた蒸気の心臓部であるボイラーはやはり、残念ながら水圧試験の結果、本線運転には耐えられないことが分かり、新日本製鉄八幡工場で作られた物を使用する運びとなった。これに合せキャブとテンダーも小倉工場で新造される事となった。
水圧試験結果、不適格となったオリジナルのボイラ。煙管の配置がよく分かる(4月5日)
現役当時と比べ、今回、外観が変更されたのはパイプ煙突から「ハチロク」新製時と同じ原型の化粧煙突に。デフは小工式K−8タイプへ交換された。またナンバープレートも花文字(ローマン体)の形式添記のタイプU型に交換された。注目したいのは現役蒸気が活躍していた時代に南九州の機関区で、採用されていた砲金製の区名札が工場の鋳物職場の手により付けられた。形式入りプレートと共に、良いアクセントとなるだろう。寸法が若干違うのは、ご愛嬌か。
汽笛は現役時に使用されていた5音室の物から、これも「ハチロク」に新製時付けられていたかん高い3音室のものへ換装された。
復元に当り、デフは脱着が可能式とし、機関区で簡単に「ハチロク」オリジナルのデフ無しの姿になるよう工夫がされている。
心臓部のボイラーは新たに作られた 宴{イラー後方にボイラ安全弁が見える(5月10日)
黒光りするキャブ。テンダーは外側を新製した(3月9日)
煙差は計測不可能。精工に作られたタイヤ部分 第一動輪は超音波探傷の結果「問題なし」と診断